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 小林泉美女流二冠に聞く
     目指すのは父の碁、似ているのは母の碁?

   今、女流棋士の中で最も注目されているのが女流名人と女流本因坊の2つのタイトルを併せ持つ小林泉美五段だ。小林光一、禮子(故人)という2人のプロ棋士の間に生まれ、祖父は木谷実という、いわば囲碁界のサラブレッドが徐々にその才能を開花させつつある。昨年7月五段に昇段し、これからは男性トップ棋士との対局も増えそう。「もっと強くなりたい」と目を輝かす“いずみちゃん”に、普段の勉強法などについて聞いてみた。
(聞き手は日本経済新聞社文化部編集委員 木村亮)


――昨年は41勝18敗。7割近い勝率を挙げ、女流本因坊も獲って2つのタイトルを手にした。満足のいく1年だったのではありませんか。

 女流名人と女流本因坊の2冠獲得は初めてと聞いていますし、もちろんうれしいのですが、納得のいく碁が打てたかどうかという点から考えると満足というところまでいきませんでした。

 昨年、成績が良かったのは四段だった夏場までに各棋戦の1次予選で勝ち星を稼ぐことができたためです。五段になると2次予選からの出場になるので、必然的に高段の人と当たることになります。今はどちらかというと、厳しさを痛感しているところです。

――昨年の碁で一番印象に残っている碁を挙げるとすれば。

 やはり祷陽子さんに挑戦した女流本因坊戦の最終局でしょうか。内容的にはメチャメチャでしたが、「悪くなってから頑張る」という私の碁の“特徴”がよく出ていたような気がします。

――確かに棋譜を見ていると力碁の印象が強い。

 別に最初からねじり合いの碁を目指しているわけではありません(笑い)。よく「地に辛い碁」と言われるように、地を意識しているのは確かです。ただ、地を意識しすぎて形勢が悪くなり、そこから頑張らざるを得ない状況になるケースが多い。できれば大場を占めていって位で勝つような先行型の碁を打ちたいと思っています。そうしていかないと、仮にねじり合いに持ち込んでも、高段の先生が相手だとすぐにとがめられるでしょうから。

――そうすると目指しているのは光一先生の碁、似ているのは礼子先生の碁ということになるのでしょうか。

 そうですね。でも母の碁に似ているといっても、私のは形勢が悪くなってから頑張る碁、母のは10目良くても差を20目に広げようという碁。自分ではかなり違うと思っているのですが……。

――小さいころに手ほどきを受けたのは、やはり御両親から?

 最初に覚える段階で母に手ほどきを受けたのは確かですが、それからしばらくの間、私の勉強の場は碁会所であり、先生は碁会所にいる人でした。ですから英才教育などというものは全くなし。

 当時は「院生になれるんだ」という思いから、楽しく碁を続けていました。小学校6年の2月に院生になるまで、父はノータッチ。院生になって初めて父に入門しました。ただ、入門してからも父に打ってもらった記憶はほとんどありあません。

 父親としては多少、甘い方なのかもしれませんが、碁盤の前では厳しくなります。月に3回程度の勉強会のほか、自分の打った碁を批判してもらうという形がほとんど。身近にいるので分からないことがあれば何でも聞けるし、一杯飲みながらでも教えてもらえるのがいい。特に、自分であまり疑問に思わないような箇所を指摘された時には、大きな発見があります。父の門下生には、知らない碁はないのではないかと思われるほど研究熱心な大矢浩一先生のような方もいて、碁を勉強するうえでこれ以上の環境はないでしょう。

――自分ではどのような勉強をしているのですか。

 とにかく棋譜を並べるのが好きです。最近の碁を中心に、1日中並べていても飽きない。自分が一生考えても思いつかないような手を発見できるのが、何といっても楽しい。棋譜はパソコンで管理していて、韓国の最新型の布石、定石も並べるようにしています。時々、インターネットでの対局を楽しむこともあります。

――碁以外では普段、どんなことをしていますか。

 テニスをしたり散歩に行ったりと、体を動かすことはやっています。ただ、どれも対局にプラスになるようにという理由でしているだけで、テニスも大した腕前ではありません。父のテニスは“アマ4段”ぐらいらしいですが、私のはせいぜい“アマ15級”といったところでしょうか。

――今年の抱負を聞かせてください。

 五段になって1次予選を打たなくて済むのは有り難いことですが、トーナメント方式なので勝たないと次の対局はありません。1つでも多く対局できるよう頑張るだけです。形勢が悪くなってから泥仕合に持ち込んでメチャメチャ頑張るというのはだんだん通用しなくなるでしょうから、とにかくメチャメチャにならないようにしたい。

 布石は星と小ゲイマジマリのコンビネーションで打つ、いわゆる“小林(光一)流”は相当研究している方だと思うのですが、やや偏っている感じもあって、もう少しバリエーションを増やしていきたい。中盤の読みの力もつけたいし、終盤のヨセも上手くなりたいと思いますが、特にヨセの計算については考えれば分かることなので、勉強するのは好きです。

 中国で女流の世界戦というのがあって、ここ5年ぐらい出場しているのですが、残念ながらなかなか勝てません。日本の代表として少々責任も感じており、もう少し頑張りたい。国内では王座戦、頑張ります(笑い)。

 いずれにしろ、4年前、NHK杯で2人の先生に勝って話題になったように、女流であることで、何かと注目されるのは確かですし、それを励みにしたいと思っています。子供向けのイベントやテレビ対局の記録など自分の対局以外の仕事も増えていますが、体力的には大丈夫。昨年を上回る60局以上の対局を目標にしたいと考えています。



小林泉美五段(こばやし・いずみ)
 1977年6月20日東京都生まれ。90年院生、小林光一碁聖に入門。95年入段、97年二段、98年三段、99年四段、2001年五段。98年に女流棋聖、99年防衛。99年度棋道賞新人賞。2001年に女流名人、女流本因坊の2冠を獲得。小林光一碁聖の長女。


 
[2002年1月8日 掲載]

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