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 瀬戸大樹三段に聞く
     勝率は8割オーバー、関西棋院期待の17歳

   関西棋院の期待を一身に集めている若手棋士がいる。瀬戸大樹三段、17歳。プロデビューした一昨年、24勝2敗(勝率9割2分)で文句なしの関西棋院賞新人賞を獲得したのに続き、昨年も14連勝を含む44勝9敗、勝率8割3分という好成績で同道玄賞に輝いた。東京、名古屋だけでなく中国や韓国にも積極的に“武者修行”に出かけ、「今はすこしでも強くなりたい」と目を輝かす。顔にあどけなさを残す「期待の星」は、驚くほどに礼儀正しく、生活面でも親元から離れて自立しているしっかり者だった。
(聞き手は日本経済新聞社文化部編集委員 木村亮)


――昨年、一昨年とプロになってから素晴らしい成績を残しています。

 一局、一局、目の前の対局を大切に打とうということだけ考えてきました。ですから、成績についてはこれまであまり意識していません。

 ただ、勝てば高段の先生とも打てるチャンスがふえますし、それがとてもうれしいです。

――九段の棋士ともずいぶん打っているようですね。

 これまでに14局打ちました。入段してから九段の先生に7連勝し、自分でも信じられない思いでしたが、その後は1勝6敗。それほど甘くはないということだと思います。

――もともと碁を始めたのは。

 確か5歳ごろだったと思います。父親の手ほどきで覚えました。もっとも父親自身はそれほど強くなく、アマ初段あるかどうかといった程度。三重県の名張市に住んでいましたが、小学校の1年から奈良県の方の子供教室に通い始めました。県が違うといっても電車で20分程の場所で、週に2回ずつ通っていました。そのときの先生が、もう亡くなられましたが、地元では有名なアマの強豪で、とても親身に指導していただきました。私自身、始めた当初からプロを目指して勉強していました。

――プロを意識していたとなると、小さいころから相当な打ち手だったわけですね。

 実はそうでもないんです。少年少女の全国大会に4回ほど出ましたが、どれも2回戦までしかいったことがありません。小学6年が終わったところで院生になったときも、当時の腕前はアマでいえば五、六段程度。同世代で私より強い人は何人もいました。でも、小さいときから持ち続けてきたプロ入りの意志は変わらず、中学卒業時点でも高校に進学する気はありませんでした。一昨年の初め、卒業後最初の年に入段しましたが、そのときの関西棋院の入段リーグでも6勝2敗でプレーオフになり、それに勝ってようやく入段しました。プロになったときも決して断トツの成績ではなかったのです。

――ずっと自宅から通っていたのですか。

 院生になってからも、中学1年のときは大阪まで自宅から通っていましたが、中学2年からは大阪市内にある関西棋院の寮に移り住みました。今でもそこで数人の若手プロや院生と共同生活しています。

――普段はどんな形で囲碁の勉強をしているのですか。

 昨年スタートした関西棋院囲碁学園に週に2、3回通っています。この学園は基本的には子供向けの教室なのですが、プロもそこで勉強できるようになっていて、結城聡九段や横田茂昭九段といった諸先輩にいろいろと教えていただいています。朝9時から夕方5時ごろまでみっちりやります。

 そのほかに、月に1回、呉清源先生の研究会に参加させて頂いています。自分の打った碁を並べて見てもらうのですが、問題点をすぐに指摘してもらえるのがすごい。全体の雰囲気も大阪とは少し違うなという印象です。また、名古屋で行われている泰正(たいせい)会という羽根泰正九段の研究会にも月1回、顔を出しています。

 海外にも何度か出かけており、韓国で金承俊七段らに早碁を打ってもらったこともあります。向こうの若手棋士は強いなという印象でした。

――最近はパソコン対局で勉強する棋士も多いと聞いていますが。

 1年ほど前まではよく打っていましたが、最近はあまりやっていません。画面を見ながら打つのと実際に碁石を並べるのでは少し感じが違うような気がしますし、今は研究会を中心にしようと思っています。

――尊敬する棋士は。

 呉先生をはじめすごい人たちばかりですが、一番身近な存在なのが中野泰宏七段です。今、住んでいる寮で以前一緒だったこともあり、公私にわたって大変お世話になっています。近々、2人で北京の中国棋院に勉強しに行く計画もあります。中野先生と、泰正会でもご一緒している羽根直樹天元のお2人には早碁も何度も打ってもらっていますし、人間的にも尊敬しています。もっと歴史的な人物でいえば好きなのは『秀策』。石の流れがとてもきれいだと思います。打ち碁をよく並べています。

――自分はどのような棋風だと思っていますか。

 よくわからないというのが本音です。ほかの人からは堅実で冷静な碁と言われることが多いのですが、自分ではそうとも思えません。布石よりは中盤、終盤の方が好きですが、自信があるかと言われれば、全くありません。

――自炊のうえに、東京や名古屋だけでなく韓国や中国に自腹で行くとなると結構、お金もかかります。

 一応、自分で管理していますが、対局料をためていますし、ほかに使うこともないので……。今は少しでも強くなれれば、という気持ちで、勉強の機会があれば積極的に参加したいと思っています。



瀬戸大樹三段(せと・たいき)
 1984年3月27日三重県生まれ。2000年入段、同年二段、2001年三段。2000年関西棋院新人賞、2001年関西棋院道玄賞(殊勲賞)。


 
[2002年2月18日 掲載]

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