近ごろ、碁の勉強が面白い。 囲碁を始めて20年以上。勉強が楽しいと思って碁盤に向かったことは、正直ほとんどない。あまりやりたくもないが、「大事な対局に勝ちたいから」とほぼ100%、結果を求めての行動であった。
そんな人間が「勉強が面白い」と思っているのである。それはつい最近の出来事のおかげだ。
ある対局でのこと。序盤早々、今まで見たこともない形が登場し、うまい対抗手段が浮かばず、本当に困った。1時間近く考えた結果、やっと、やっと活路が見いだせた。
もちろん対局中に出てくる局面はほとんど新しい局面なのだが、この時のように序盤早々に出てくる新しい形は、変化に富んでいる上に失敗すると致命的になることが多く、納得する図を時間制限のある対局中に生み出すことはとても難しいのだ。
しかもこの時は朝早く、まだ気持ちが対局に切り替えきれない時で本当に参った。そんな中、回らない頭を一生懸命回転させ、必死に考えた結果、珍しくウマくいった。
もちろん最高にうれしかった。
この喜びはもちろん成功した喜びもあったが、それ以上に自分の力で創(つく)り出し、生み出した感覚が何ともうれしく、久しぶりに身体に染み渡るような思いで満たされた。
一流棋士や他の棋士にとっては「今さら何を」と言われるかもしれない。
しかし、どんなに否定してみても、勝った時ばかりが無性にうれしいという「結果にこだわる性格」から抜け出せないでいた自分にとって、この自分の頭で考える面白さを思い起こさせてくれた出来事は、勉強の楽しさを知る大切なことだった。
プロとしてお恥ずかしいことだが、いつのまにか情報をもらい、記憶することばかりで、自分の中から何かを創り出す習慣がなくなりつつあったのかもしれない。
そういえば、研究会などで一緒になる棋士仲間をみていると、もちろん結果にもこだわっているのだろうが、勝負とは関係なく勉強していること自体がとっても楽しそうだ。
頭を使うことは楽しい。
生み出すこと、創り出すことは本当に楽しい。
「面白キコトモナキ世ヲオモシロク」
碁は間違いなく私の人生を豊かにしてくれている。これからも少しでも良い碁を打っていきたいものである。
長らくの間、つたない話にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。今後も囲碁を楽しみ、人生を楽しみ、のんびり生きていきたいと思います。
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梅沢由香里五段のエッセーは残念ながら今回で終了いたします。長い間、ご愛読いただきまして有り難う御座いました。