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第34回 バトンタッチ

この度、3年前に出版した「女流棋士」(講談社)が文庫化されることとなった。
「女流棋士」は、私の半生記であり、また棋士となるきっかけとなった交通事故の時に母が書いた日記とのコラボレーション本でもある。
子供の頃から母が私に望んでいたこと、それは立派な棋士になることではなく、一人の女性として恥じることのない人間になってほしいということだった。将来あるだろう大きな困難にも負けない力を身につけてほしい、当たり前のことを当たり前と思わず、感謝する心を持つ人間になってほしいという全ての母親が願うであろう当たり前のことを何より私に望んでいた。
18歳、初めて事故当時の日記を読んだ時、私はどれほど両親の愛を一身に受けて育ててもらったのかを知り、両親への感謝の気持ち、そして何より「今」こうしていられることを幸せに思った。
プロの道は険しい。しかしその中にも幸せな事はたくさんあるはずなのに、そのことに気づくのは簡単なようで意外と難しいことなのだと思う。
あれから10年が経ち、私も結婚、引退といろいろな局面に立ってきた。どれも最善手かどうか今はまだわからない。いや、もしかしたらまだわからなくて良いのかもしれない。でもいつの日か後ろを振り返った時に「ああ、幸せだったな」と思えるようになっていたい、と思う今日この頃である。
文庫本では、一章分を書き下ろし、引退に至った胸中なども書かせていただいた。
是非御一読いただければ幸いです。
◇ ◇ ◇
さて、和の小径も今回で34回を数えるが、来月からは岩根忍女流初段にバトンタッチをし、私は少しお休みをいただくことになった。
彼女との出会いは、10数年前に遡る。大阪の将棋祭り控え室で小学生の彼女はニコニコしながらちょこんと椅子に座り、まるでお人形さんのように誰からも愛されていることがわかった。
「あんなぁ〜、しー(忍)なぁ」と初対面にも関わらず笑顔で私に話しかけてきてくれた彼女を私は一瞬にして好きになり、妹のように思ってきた。
今も変わらないその天真爛漫さは、周囲の誰をも優しい気持ちにさせてしまう不思議な魅力の持ち主だ。また奨励会仕込みの実力も彼女をより一層魅惑的な棋士にしている。これからが楽しみな逸材、大注目株である。
しー、これから頼むで!
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高橋 和 (たかはし・やまと)
1976年6月17日神奈川県生まれ。小学校1年生で父親と将棋を始める。
87年4月、佐伯昌優八段門で女流育成会に入会。91年春、史上最年少
14歳で女流プロ棋士(女流2級)デビュー。92年3月 1級、94年4月初段。
95年3月、神奈川県立鎌倉高校を卒業。2000年4月、二段に昇段する。
4大タイトルの一つ、倉敷藤花戦で1999−2001年まで3年連続ベスト4。
2001年度(第40回)詰将棋看寿賞を女性として初めて受賞(短編部門)。
血液型は O型。趣味はバスケットボール、カメラ、囲碁、スノーボードなど。
自己分析は「さっぱりした性格」「長所(?)は単純、短所は怒りっぽい」。
好きな食べ物は寿司、嫌いなのはチーズ。座右の銘は「継続は力なり」。
公認サイトとして1997年12月に開設した「やまとちゃんのページ」がある。
マネジメント事務所の(株)サニーサイドアップに
所属し、多方面に活躍。
2002年4月、26年間の喜怒哀楽を綴った「女流棋士」(講談社)を出
版。
2002年9月から「将棋王国」でエッセイの連
載を始め、大きな話題を呼ぶ。
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